「一人暮らしをしていた兄が亡くなりました。兄は独身で親も亡くなっているので、私が相続人になると思うのですが、どのような財産があるのか分かりません。調べる方法は何がありますか」
生前に財産の詳細を聞かされていなかった場合や、亡くなった人が遠縁の親族の場合、資産状況がよく分からないことがあります。
まずは財布の中身や、郵送物、書類棚などを探してみることになりますが、それだけではよく分からない場合もあります。故人の財産についてどういう調査方法があるのか、財産ごとの調べ方を紹介します。
不動産を所有している方に対しては、毎年4月頃に固定資産税納税通知書が届きます。
所有している不動産はほぼその通知書に記載されています。ただし非課税の土地や共有の土地(山林や、家の周囲の私道)はそこに記載がないことがあります。
一方、固定資産税名寄せ帳には、その人が所有している不動産がすべて記載されていますので、見落としを減らせます。市役所の資産税課や都税事務所で取得可能です。
ただし名寄せ帳は、市町村外の不動産は記載されず、市町村によっては載らない不動産があることがあります。
令和3年に不動産登記法が改正され、登記簿から住所氏名等を元に所有不動産を名寄せできる制度が新設されました(所有不動産記録証明制度(仮称))
令和8年までに施行される予定です。
市町村単位ではなく全国から検索できるため、不動産の把握と相続登記の促進が期待されています。
ただし、そもそも不動産が登記されていない場合や、転居や改名にどこまで対応できるかなど課題もあります。
参考
(所有不動産記録証明書の交付等)
第百十九条の二 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。
3 前二項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。
4 前条第三項及び第四項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。
生命保険照会制度を利用し、照会対象者が契約者または被保険者になっている生命保険契約の有無を照会できます。
近年はネット保険の普及によって、保険契約の書面などが少なくなっており、生命保険契約はしてそうだが保険会社が分からないときに利用できます。
利用できるケースは以下の場合です。
・対象者の死亡時
・認知判断能力の低下時」(認知症になったとき)
・災害による行方不明時
一般社団法人生命保険協会に対して照会書と戸籍・診断書等の必要書類を提出して行います。
契約の有無を調べるのみですので契約内容は個別に生命保険会社に問い合わせる必要があります。
また1照会当たり3000円の利用料がかかりますので、まずは保険証券や郵送物、通帳の履歴などを調べましょう。
証券保管振替機構への照会により、上場企業に係る株式や社債、新株予約権、投資信託等の保有状況を照会できます。
上場企業については現在は紙の株券が廃止されており、株式等は証券会社の口座にて管理されています。
証券保管振替機構は各証券会社の口座情報を把握しているため、株式等を持っていそうだが証券会社が分からないという場合に有用です。
ただし、上場していない会社の株式は対象外です。
残念ながら金融機関を横断して口座を探す方法はありません。
金融機関ごとに個別で照会をかけることになります。
口座の存在は通常は通帳などから発覚しますが、通帳のペーパーレス化やネット銀行の普及などで故人の預金を見落としてしまうリスクも増えてきています。
銀行・クレジットカード会社・消費者金融は指定信用情報機関にて各個人の債務を横断的に把握しています。
クレジットカードのリボ払いやカードローン、教育ローンなども記載されていますので、どれぐらいの借金があるのかほぼ把握できます。
指定信用情報機関は、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターの3つがありますが、加盟金融機関はだいたい重複していますので、このうち1つか2つに照会をかければ十分といえます。
債務が多い場合は相続放棄を検討することになります。
今回は財産の種類ごとに調べる方法を紹介しました。これらの調査は必須の作業ではなく、疑わしい場合に利用できる手続きです。
財産の調査は相続人に負担かかりますので、やはり生前に財産の一覧などを用意しておくことが望ましいと言えます。