「独身の叔母が亡くなりました。叔母は私に財産を譲るという遺言を書いたと生前話していたのですが、遺品の中には見つけられませんでした。
探す方法は何かあるでしょうか?」
遺言の有無によって相続関係は大きく変わります。
故人の遺志を知るために重要な遺言ですが、書面を見つけられなければ存在しなかったことになってしまいます。
今回は遺言を調べる方法を紹介します。
遺言の形式は自筆証書遺言と秘密証書遺言、公正証書遺言の3つに分かれます。
このうち、秘密証書遺言と公正証書遺言は公証役場で作成しますので、公証役場に原本が保存されます。
自筆証書遺言は自分で書くものですが、保管方法によっては存在を調べることが可能です。
公正証書遺言は、その証明力の高さから遺言方式として広く利用されています。
平成元年以降に公証役場で作成した遺言は、原則、オンライン上で管理されています。
すべての公証役場で、遺言の有無を【作成年月日・証書番号・遺言者の氏名・公証人氏名】を元に全国規模で検索することが、原則、可能です。
遺言書の中身まではオンライン化されていないので、検索結果を元に、保管されている公証役場に原本の閲覧または郵送を請求することになります。
検索は無料ですが公証役場に出向いて行う必要があります。予約が必要なケースもあるので事前に確認をしましょう。
《添付書類》
・遺言者の死亡を証する戸籍あ
・法律上の利害関係を証する書類
請求する人が相続人である場合…相続関係を証する戸籍
請求する人が相続人以外である場合…利害関係を証する資料
・請求者する人の本人確認資料
2020年に始まった制度で、遺言書保管所(法務局)で遺言の保管ができるようになりました。それに伴い、保管された遺言を全国規模で検索できるシステムが導入されています。
自筆証書遺言保管制度の特長として、相続人への通知があります。
遺言者が連絡人を指定していた場合は、遺言者の死に伴って遺言書保管所が自動的に、連絡人に遺言書が保管されている旨を通知します。
また誰かが遺言書情報証明書請求または遺言書の閲覧をした場合、その他関係相続人全員に「遺言書を保管している旨の通知」が行われます。
このように自筆証書遺言保管制度を利用している場合は、相続人が遺言書を見つける可能性は非常に高いことになります。
ただし、遺言書の内容の精査は遺言書保管所は行わないので、見つかった遺言書が必ずしも有効とは限りません。
□ 遺言書保管事実証明書
特定の遺言者の、自分を相続人や受遺者等又は遺言執行者等とする遺言書が保管されているか否かの確認ができます。
《添付書類》
・遺言者の死亡を証する戸籍
・請求する人の住民票の写し
・相続関係を証する戸籍
・顔写真付きの官公署から発行された身分証明書
・手数料800円(収入印紙を用紙に貼ります)
□ 遺言書情報証明書
遺言書保管所に保管されている遺言書の内容の証明書を取得することができます。
《添付書類》
・遺言者の出生から死亡までの全ての戸籍
・相続人全員の戸籍謄本 (遺言者の死亡日以後作成のもの)
・相続人全員の住民票の写し(作成後3か月以内のもの)
・顔写真付きの官公署から発行された身分証明書
・手数料1400円(収入印紙を用紙に貼ります)
□ 遺言書の閲覧
遺言書保管所で保管されている遺言書の内容を確認することができます。閲覧の方法は,モニターによる遺言書の画像等の閲覧,又は,遺言書の原本の閲覧となります。
《添付書類》
・遺言書情報証明書のものと同様です。
・手数料 モニターによる閲覧1400円、原本の閲覧1700円
(収入印紙を用紙に貼ります)
上記2つでも見つけられなかった場合は探すのが難しくなります。調べてみるとすれば候補は以下のようなところです。
1.士業事務所
遺言書作成と同時に預けている場合や、知人の士業に頼んでいるケースがあります。
通常、弁護士・司法書士・行政書士・税理士が依頼先になります。
なお士業が遺言を作る場合は、遺言者が死んだ時に備えて、親族を連絡人しておいたり、公正証書遺言・自筆証書遺言保管制度を併用することが多いです。
2.銀行
最近は相続に関するサービスを提供している銀行が増えています。
長く利用している銀行があれば、貸金庫や遺言書保管サービスを照会してみるのも手です。
3.寺
代々のお墓があるお寺に預けていることもあるかもしれません。
遺言書がある場合は大半は自宅に保管されていたり、家族に伝えていたりして見つかることになると思います。
見つからない場合は公証役場と法務局をまず調査しましょう。
また遺言を残す人も、これらを積極的に利用しましょう。