「父が亡くなったので、父名義の不動産を、相続人である私に変更したいのですが、権利証が見たりません。相続登記は可能でしょうか?」
よくいただく質問です。
結論から言うと、相続により不動産の名義を変更する際は、原則、権利証は不要です。しかし、例外もありますので、これについては後述します。(江戸川区西葛西在住の方からのご相談)
※用語説明:権利証とは、「登記済証」や「登記識別情報」のことをいいます
■ 原則
不動産の名義変更というと「権利証」を思い浮かべるかもしれませんが、原則、相続登記には、権利証は不要です。
具体的に、相続登記とは次のような場合を指します。
・法定相続人へ法定相続分で相続させる場合
・遺産分割協議により、法定相続人のうち、特定の者に相続させる場合
・「特定の相続人へ相続させる」という遺言にもとづき相続させる場合
これらの場合、戸籍等で法定相続人であることを証明し、遺言や遺産分割協議書で相続をしたことを証明できれば、不動産の名義変更は可能です。
■ 例外として、権利証が必要な相続
(1)遺贈の場合
実は権利証が必要な相続もあります。それは、「遺贈」といわれる相続の時です。
登記実務では、遺言で「法定相続人以外の者に相続させる」と記載されている場合は、権利証を添付する必要があるとされています。
具体的には、「お世話になった介護ヘルパーさんへ不動産を相続させたい」とか「区役所へ寄付したい」などの遺言があった場合です。
この場合は、権利証がないと名義変更ができませんのでお気を付けください。
(2)亡くなった人の住所がつながらない場合
相続登記をする際は、亡くなった方の最期の住民票を法務局へ提出するのですが、この亡くなった方の最期の住所が、相続の対象不動産の登記簿に記載されている住所と一致しない場合は、亡くなった方と不動産の所有者が同一人であることを証明できないため、住所のつながりを証明する書類(戸籍の附票など)をさらに添付する必要があります。
しかし、役所の保存期間が過ぎてしまっている場合などで、つながりを証明できない場合は、登記官より、代わりに、所有者しか持っていない権利証を添付するよう求められる場合があります。
上記のとおり、原則、不動産の相続登記には権利証は不要です。
したがって、紛失してしまっていても問題ありませんし、残っていたとしても原則使用することはありません。
しかし、遺言にもとづき相続人以外へ相続させる場合(遺贈)は、権利証が必要になりますのでご注意ください。