依頼者
「夫の実家の墓に入りたくないので、遺言で、海に散骨をして欲しいと書いておきたいのですが…。」
大星
「葬儀や埋葬方法については、遺言に書いても法的な拘束力はありません。別の方法を検討する必要がありますね。」
お客様からは、自分が死亡したあと相続で揉めて欲しくないという相談に加えて、前述のような葬儀や埋葬方法についての希望を遺言で残しておきたいという相談がよくあります。
ただ、残念ながら、葬儀や埋葬方法について遺言に書いたとしても法的な効力は認められません。
理由は、遺言によって実現できることが民法には定められており(法定遺言事項)、それ以外については、法的な効力が認められず、あくまで希望やお願いというレベルの事項(付言事項)になってしまうからです。
したがって、葬儀や埋葬方法を遺言に記載したとしても、あくまで希望やお願いのレベルにすぎず、それに親族がそれに従う保障はありません。
参考までに、「法定遺言事項」は以下のようなものがあります。
①認知(民法781条2項)
②未成年後見人の指定(民法839条1項)
③未成年後見監督人の指定(民法848条)
④推定相続人の廃除、その取消(民法893条、 894条2項)
⑤祭祀の主宰者の指定(民法897条)
⑥相続分の指定(民法902条1項)
⑦特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
⑧遺産分割方法の指定(民法908条)
⑨遺産分割の禁止(民法908条)
⑩相続人の担保責任の指定(民法914条)
⑪遺贈(民法964条、 986条~1003条)
⑫遺留分侵害額の負担割合の指定(民法1047条1項2号但書)
⑬遺言執行者の指定(民法1006条)
では、葬儀や埋葬方法を指定したい場合はどのようにすればよいかですが、死後事務委任契約を予め締結しておくという方法があります。
死後事務委任契約とは、読んで字のごとく、死後の事務を第三者に委任するための契約です。
契約により、葬儀や埋葬方法を指定しておくことにより、委託を受けたものが、亡くなったあとの処理を契約に従って実行してくれます。
大星司法書士事務所でも、死後事務委任契約を手掛けた実績がありますので、お気軽にご相談ください。
遺言で、葬儀や埋葬方法を指定しても法的な効力はありません。
遺言に記載されていたとしても、それは希望やお願いというレベルですので、それに遺族が従うかどうかの保障はありません。
ご希望の葬儀や埋葬方法を確実に実行してもらうためには、
1.生前に、遺族にその気持ちをしっかり伝えておくこと
2.死後事務委任契約を締結し、予め準備をしておくこと
が大切です!